オーダーメイド/村田侑衣
1分で読めるSF小説
金曜日の夜。仕事を終えた僕を玄関で迎えてくれた妻の笑顔が、いつもよりも色っぽく見えた。
「ただいま。何かいいことでもあった?」
鞄を床に置いて手を握る。
「子どもが欲しいの」
妻は、僕の目をじっと見ながら甘い声でそう言った。「おかえりなさい」よりも先に……と少し笑ってしまったが、すぐに真剣な表情を作り直して言った。
「わかった。すぐに作るよ」
これまでは二人の時間を大事にしてきた。もちろんこれからも大事にするつもりだが、それ以上に子どもが欲しい。妻と一緒に育てていきたい。最近、そう考えるようになっていた。
*
「おはようパパ、ママ。はじめまして」
娘は休日の間に完成した。
「君にそっくりだろ?」
「とっても可愛いわ」
機械の娘の第一声に笑顔を浮かべる妻。
「これからどんどん言葉を登録していくから。世界一可愛い子になるよね?」
この笑顔のためなら僕は何だってする。きっと何だって出来る。そんな想いを伝えるように、繋いだ右手に優しく力を入れた。
「とっても可愛いわ」
愛する妻は今日も要望通りの返事をくれる。
〈了〉
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