【掌編小説】ポーカーフェイス

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ポーカーフェイス/村田侑衣
1分で読めるホラー風小説

「あなたが浮気してたの知ってるの」

 静寂の中、食卓の向かいに座る彼に言い放つが、彼は何も答えず表情も変えない。

「あなたの携帯。こっそり見ちゃったの」

 彼の性格上、プライバシーがどうこう言われる心配は元よりしていなかったが、それでも罪悪感はあった。ようやく打ち明けることが出来たという安堵と、相変わらず様子の変わらない彼に対して小さくため息を吐く。
 元々ポーカーフェイスな彼。喜怒哀楽が分かりづらく寡黙なのは知っていたが、まさかこの話題でも眉一つ動かさないとは……まあ、そんなところに惹かれて付き合い始めたのだが。
 どんなことにも動じないところ。多少のことでは声を荒げない穏やかなところ。浮気自体は確かに褒められたことではないが、彼の魅力を考えれば言い寄って来る女がいるのは当然と言えば当然だ。
 私もその内の一人。離れたいわけではないし、今更責め立てるつもりもない。

「もう許してるから」

 それでも瞬きすらしない。

 本当に彼はポーカーフェイスだ。

   〈了〉

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