【掌編小説】ガーデニング

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ガーデニング/村田侑衣
1分で読めるホラー風小説

 揺れるサクラの下に作った小さな花壇。庭の隅にある私のお気に入りの場所。
 しばらくじっと眺めていたのだが、カラカラになった土を見て水やりに来たことを思い出した。お気に入りのジョウロで水を撒く。放物線を描いて落ちていく水は土に触れた途端に姿を消した。
 湿った土を手に取りパラパラと落とす。詳しいことは分からないが植えた子達が元気そうに見えるので、水やりはこれくらいで問題ないのだろう。
 見よう見まねで始めたガーデニングは、いつの間にか私の生きがいになっていた。
 元々興味があったわけではない。だが、いざ植えてみるとやはり愛着が湧く。母性本能に近いのかもしれない。と言っても子どもはいないし、そういう経験をしたこともないのではっきりとは分からないが。
 まだ昨日植えたばかりだがユリのめが二つとも出ている。控えめなそれが本当に愛らしい。隣のツバキは先週植えて、昨日見事にはなをさかせた。かおりも凄く良い。立派に育ったようだ。小さなつぼみの頬を撫でながら理想の庭に思いを馳せる。
 いつか私の好きなものでこの庭を埋め尽くせたら——。濡れたカエデのはを掴む。

 次はマリコのみみでも植えてみようかな。

   〈了〉

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