【掌編小説】コインランドリー

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コインランドリー/村田侑衣
1分で読める不思議な小説

 バケツをひっくり返したような雨の中、ようやく最寄りのコインランドリーに辿り着いた。最寄りとは言っても自宅から徒歩で十五分ほどかかる。車を保有していない私は衣類をまとめたゴミ袋を抱えて走るしかなく、ずぶ濡れの体は悲鳴をあげている。

 ゴミ袋からシャツやズボンを取り出し洗濯機へと投げ入れる。本当なら今着ている服も全て脱いで一緒に洗いたいところだが、理性が働き何とか踏み止まった。
 百円玉を三枚入れスタートボタンを押すと、ガタガタと不穏な音を発しながら回り始めた。小さくため息をつきボロボロの丸椅子に腰掛ける。あとは乾燥が終わるまでの間に雨が止むことを祈るしかない。

 ふと、隣の乾燥機へ目をやると何かのぬいぐるみがクルクルと回っていた。コインランドリーで洗濯するのか、などと考えていると女の子の声が聞こえてきた。

「シロってなまえなの。いまかんしょうちゅう」

 いつの間にか横にいた小さな女の子。一瞬驚いたが、すぐに笑顔を作り返事をする。

「洗って、乾かしてあげてるんだね」

 偉いね、と頭を撫でる。嬉しそうな顔で女の子は得意げに言った。

「ほえないの。いつもはいっぱいほえるんだけど。シロもえらい?」

   〈了〉

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